ビスクドールについて、あれこれ

ビスクドールとは、英語ではbisque doll、仏語ではpoupee en biscuit (美味しそう!)

2度焼き(biscuit)が、語源です。

もともと、19世紀のヨーロッパのブルジョワ階級の貴婦人・子女達の間で流行したもので、

それから100年以上経て、現存する当時のビスクドール(アンティークドール)は、

数も少なく大変高価なものとなっています。

リプロダクションとオリジナル

私の現在製作している人形は、

アンティークのリプロダクションと、原型から作るオリジナルの2種類のビスクドールです。

まずリプロダクションは、

アンティークの人形(19世紀に台頭した天才人形職人 ・ジュモーやブリュなどの工房から作り出された人形)から

模られたモールドを使います。

現存するアンティークドールは、数も減り、状態の良いものも少なくなりつつあります。

人形を愛する全ての人が、稀少で大変高価なアンティークドールを所有することは、不可能に近いこと。

そんなアンティークドールを手本に、現在私が製作しているものが、リプロダクションの人形です。

既存のモールドがあるから、製作は簡単かといえば、とんでもありません。

ビスクドールの作り方へ

複雑で繊細な、気の遠くなるような手のかかる工程を踏むからこそ、

ビスクドールには気品と、高度な手作業による技術から生まれる風格が備わるのでしょう。

では同じモールドを使えば、皆同じ顔になるかといえば、否。

10人が作れば10通りの顔になりますし、1人が10個作っても、決して同じ顔は出来ません。

例えば、下の2体の人形は、同じモールドから製作しましたが、表情が違いますね。

 

まず、アイカットの段階で、それぞれの人形に違いが出てきます。

そして肌の色づけ、顔の描き方、髪の毛の色・スタイル、衣装・・・・・・

微妙な違いの重なりが、最後には大きな差となって、個性の違う人形が生まれます。

だからこそ、リプロと言えども毎回違う感動や驚きがあり、また新しい命を作り出したいと思うのでしょう。

それは、クラシック音楽を演奏することに似ていると感じます。

19世紀の人形工房から生み出された人形達は、

さながらバッハやベートーヴェン、モーツァルトにブラームスなのです。

私達はその時代にあくまでも忠実に演奏することもあれば、

現代の味を加えることも・・・

一方オリジナルは、粘土から作る独自の顔ですので、作者の腕の試されるところでしょう。

まず、粘土で原型を作り、それを元に石膏型を作ります。

その後は、リプロと同じ、磨きや窯焼き、顔描き、衣装作りなどの工程を踏み、出来上がります。

ここで、オリジナルの面白さにはまり、オリジナル一本になる作家さんも多いことと思います。

私の場合は、オリジナルに取り組んだ後、またリプロに取り掛かると、

改めて昔の人形職人の作り出した顔の素晴らしさを再確認することが多く、

リプロを製作しつつ、オリジナルを勉強している毎日。

リプロダクション製作は、実際飽きることはありません。

ブリュ、ジュモー、アーティー・・・本当に、存在感があり、長い年月を経て、今も人々を魅了する最高の人形達です。 そんな最高の人形に、自分の個性をミックスすることが出来る・・・そこがリプロの最大の魅力でしょうか。

2010/8/3

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